森林開発に対する行政指導の限界
熱海の土石流に関連して
森林を開発する時は行政の充分な審査・指導が必要
こういう意見があります。
確かに自然を破壊し、保水力も低下し
盛土は崩れやすい
行政に充分に審査・指導してもらえば
熱海市のようなことにはならない。
こういう意見を持つのは当然です。
一方で開発する側はどうかというと
自分の土地で何をしようと他人が
とやかく言うのはおかしい。
ましてや行政が何の権利があって自分の
財産権を侵害するんだ!
そうなんです。
財産権は憲法第29条で以下の通り規定されています。
財産権は、これを侵してはならない。
同条2項
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
森林の場合はその内容を森林法で定めております。
第十条の二
民有林において開発行為をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならない。
一 当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること。
一の二 当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること。
二 当該開発行為をする森林の現に有する水源のかん養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること。
三 当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること。
1ha以上の森林を開発するためには知事の許可が必要です。
財産権に一定の制限はかけ、その制限をクリアすれば許可しないといけません。
その制限は失われる森林機能以上にはできなく
恣意的な制限は許されないのです。
良く、開発地域の周辺の方々から
開発して崩れたらどうするんだ?
開発計画以上の雨が降って水路が溢れたらどうするのだ?
このような意見を聞きます。
しかしながら森林の持つ機能は万能ではなく、一定のものです。
森林の持つ機能以上の者を求められても
そういう指導は出来ないのです。
森林があっても一定以上の雨があれば崩れますし、水害も出ます。
知事の許可は1ha以上のもので、それ以下の場合は
市町村長への伐採届になります。
届出ですのでほとんど規制はかけれません。
熱海の場合は市への伐採届による開発です。
森林も所有者がいて、売買されます。
地方行政は法律に定められた範囲になります。
そういう意味で限界があります。